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中屋万年筆店のこと ~松江~

 

 

おひさまの日差しが差し込む窓辺にいると

暑い感じさえするけれど

吹く風は冷たくて

少しずつ冬の気配が混じります

 

今日は立冬でした

暦の上での冬の始まり

 

 

日も短くなりました

 

 

 

お店のガラス窓の外

いい具合の夕焼けが目に入り

八尾川橋の上から見てみようと思っていたのに

お客様と話し込んだわずかの間に

 

いつの間にか

夕焼けのショーは終わりを迎え

・ 

なんとか拝めたのは夕陽のおこぼれ

 

 

う~ん

なんとも名残惜しい

 

 

 

(^^;

 

 

 

さてさて

 

 

先日 

 

修理に出していた万年筆が

帰ってきました

 

 

 

 

  

丁寧にていねいに梱包された私の万年筆

 

そして

 

万年筆の扱い方あれこれが書かれたプリントに沿えて

万年筆でさらさらっと書き込まれた

中屋万年筆店さんからの短い短いお手紙

 

 

 

 

前略

2本共に平成22年に修理してます

 

万年筆自体はほとんど悪くなっていません

この先何十年も使用出来ると思います

大切にお使いください

ペン先が曲がっていましたので修理しました

之で大丈夫です

 

私も92才ですので之で最後の修理です

 

 

 

 

 じーんときて…

思わず涙が出そうになりました

 

 

 

中屋万年筆店の店主

久保勝彦さん

 

 

 

久保さんの

このお仕事に対する思いや姿勢

 

万年筆への愛情や

修理した万年筆を使う人への願い

 

 

そして

 

久保さんの生きざまや

久保さんの人柄や

 

 

様々なものが

この数行に凝縮されている

 

そんなお手紙でした

 

 

 

 

 

 

…中屋万年筆店 久保勝彦さんのこと…

 

初めてそのお名前を聞いたのは

大事にしていた万年筆のペン先を傷め

途方に暮れていた頃のこと

 

 

 

文具店にも相談しましたが

修理は難しいとのこと

 

これはもう無理かもねとあきらめかけていたところ

松江に万年筆の修理をしてくれるお店があるらしいと…

 

 

それが

中屋万年筆店さんでした

 

中屋さんのお手紙によれば

 平成22年なのですね

誰がどんなペンのどんな修理を依頼してきたのか

きちんとカルテを残していらっしゃるのでしょう

 

 

今では万年筆の修理調整の技術を持つ方が

本当に少なくなってきたそうです

 

特に万年筆の命ともいうべきペン先

このペン先の開き具合を

使う人の筆圧や角度などを考慮しつつ

指先で調整する繊細な技術を持つ職人さんは

全国にも数えるほどしかいらっしゃらないのだとか

 

 

 

久保さんの素晴らしい技術を求めて

全国から万年筆の修理の依頼が舞いこむのだそう

 

万年筆の聖地と呼ばれていることも

後に知りました

 

 

初めて修理依頼をした折

不具合があった私の万年筆の書き味を

見事に蘇らせていただき

手入れの仕方を細かく書いたプリントを添えて

送り返してくださいました

 

 

教員としてここに来た年に求めた万年筆

思い入れのあったその万年筆を

教員というお仕事を終えるその年に

見事に蘇らせていただいたこと…

 

そんなことにも

なんだか不思議な巡りあわせを感じ

 

久保さんにお会いしたいと

数年前に1度

お店を訪ねたことがありました

 

けれど

 

残念ながら

ちょうど久保さんはお休みで

お会いすることはできず

そのまま今に至ります

 

 

 

 

 

 

 

之で大丈夫です

何十年も使用できると思います

 

なんとも心強い久保さんのヒトコト

 

そう言っていただいた万年筆は

修理に出す前よりもなめらかな書き味となって

ここにあります

 

 

誰かが愛用していたモノに

また命を吹き込んで

自信をもって

思いを添えて

その人の手もとに送り返す…

 

なんと素敵な仕事だろうと思います

 

 

私も92才ですので之で最後の修理です

 

深い深いヒトコト…

久保さんの思いと人生のありようがにじむような

そんなヒトコト…

 

もう2度と傷めることのないように

大事に大事に使わねばと心から思いました

 

 

 

 

 

 

久保さんに会いに

中屋万年筆店に行こうと思います