ささきばあちゃんのこと

ささきばあちゃんがお亡くなりになりました


私が島に来て以来20数年

いろいろなご縁があったばあちゃんで・・・


そのつながりの中で

私のこと

店長さんのこと

それから息子たちのこと

ほんとうにかわいがってくれたばあちゃんでした



島にやってきたばかりの頃

私が暮らしたのは下西の湾を見下ろすように建つ

小学校の住宅でした

湾沿いにあったばあちゃんの部屋から私の家はよく見えていたのだそうで

「一人でにょうばの先生があんなところで寂しかろう」と

案じてくださったと聞きます


遅くまで灯りが付いていれば心配し

灯りが付かない夜はどうしているかと案じられ

「気になって寝られんがな~~笑」

お孫さんの家庭訪問に伺った折

そう笑って話されたことは今でもよく覚えています



手押し車に大きなお魚や大根をのせて

えっちらおっちら顔を見にきてくださったこと



アバレンボウくんが生まれた翌日

病室にひょっこりやってきて

手に握りしめた一万円を私に握らせ

「お祝いだ うちのもんには内緒だぞ」

いたずらっこのように笑っておっしゃられたこと



「カタクリを見に行こう」と

近所のおばあちゃん数人と私

それから赤ちゃんだったアバレンボウくん

不思議な一団で

カタクリの群生地に行ったこともありましたっけ



とても働き者のばあちゃんで

すぐに草ぼうぼうにしてしまう我が家の周辺を

いつの間にかきれいさっぱり草抜きしてくださったことも

1度や2度ではありません

その頃はもういくぶん体が思うようにならなかったはずなのに…



下西の湾沿い

縁側に腰掛ければ海風が心地よく吹き込むばあちゃんの部屋には

いつもばあちゃんのお茶のみ友達がいっぱいでした

「茶のみが来るだけん お茶がすぐなくなっだけん」

そう嬉しそうに お茶を注いでおられた姿


誰がきても 誰がいても

「上がってお茶のんでいかっしゃい」

そう言って

ちょっと不自由な手で急須を握り

熱湯玉露をゆっくりたっぷり注いでくださったものでした

そこでお茶をのみつつ世間話をしつつ

知らなかった者同士が「知り合い」になる…




「隠岐ならではの人付き合い」

その心地よさをたくさん教えてくれたばあちゃんでした




風こそ冷たかったけれど

今日の空はまさに春


こんな日がばあちゃんの旅立ちの日でよかったと

不謹慎かもしれないけれどそう思う


ばあちゃんの旅立ちが安らかなものでありますように・・・